NPO運営のガイドラインQ&A
事務手続きのポイント
NPOの事務手続き
2021/03/30
Q新たな分野の事業に着手するときに気をつけることは?
新たな分野で新たに事業を行う場合、自法人の定款に定めた特定非営利活動に含まれている事業であるかを必ず確認する必要があります。つまり、定款に定めた以外の特定非営利活動は行うことができません。
機動的に行うために、近い将来に取り組む予定がある、もしくは取り組む見込みがある場合は定款に定めておきましょう。しかし、その予定や見込みがないものまで定めてしまうと、活動報告書において未実施のものが多く存在することとなり、活動していないと捉えられ、信頼性を欠くことになりかねませんので注意が必要です。
(特定非営利活動20種類)
https://www.npo-homepage.go.jp/about/npo-kisochishiki/nposeido-gaiyou
2021/03/30
Q会計の付け方で気を付けることは?
法第27条第2号には、「会計簿は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること。」と規定されています。また、法第29条には、所轄庁への提出書類として貸借対照表の作成が求められていることから、年度末には、現金、預貯金、未収金、未払金等について一種の「棚卸し」を行い、当該年度末の状況を明らかにする作業が必要となるため、複式簿記で会計を付ける必要があります。
会計知識があまりない場合においては、いわゆる官庁会計と言われる単式簿記も「正規の帳簿の原則」に則っているため、これにより記帳することも差し支えありません。
しかし、単式簿記は入出金のみを把握するだけですので、記帳方法が簡単で作業量も少なく、簿記の知識が無くても作成できるメリットがありますが、現金の増減理由や資産の現況が把握できない、ひいては財政状態の変化がリアルタイムで把握できない等のデメリットがあります。
これらのことを理解した上で、単式簿記による記帳も差し支えありませんが、早期の複式簿記への移行をお薦めします。
(特定非営利活動促進法第27条、29条 参照)
2021/03/20
Q障害福祉サービスや介護保険事業を行っている場合に、会計の付け方で気をつけることは?
事業所監査等を受検する際等、拠点やサービス区分ごとの区分経理が求められます。そのため、例えば障害福祉関係サービスを実施しているNPOでは、社会福祉法人会計基準に沿って、収益については訓練等給付費収益、障害児通所給付費収益、利用者負担金収益等に、費用については就労支援事業費用等、勘定科目をあらかじめ細分化しておくことが望まれます。
2021/03/30
Qどんなときに定款変更や変更登記、所轄庁への手続きが必要なの?
下図のように、事象に対してそれぞれ定款変更や変更登記等が必要になりますので、参考にして手続き漏れがないようにしなければなりません。
2021/03/30
Q総会や理事会を開催するときに気をつけることは?
総会や理事会とする場合、定款に定める招集方法を守り、きちんと議事録を作成する必要があります。また、名ばかりの総会や理事会ではなく、定款に定める権能に従い、きちんと報告をし、今後の法人運営について議論をすることが大切です。そのためにも、法人の会員や理事の人数や状況に応じて、法人にあった権能を定める必要があります。法人の定款を見れば、総会または理事会にどれくらい重きを置いた組織運営をしているかが見えてきます。
2021/03/30
Q寄附金を集めるときに気をつけることは?
寄付者に対して対価性のある返礼品をお返ししてしまうと、寄附金に該当しないと判断されることがあります。
寄附者に対してお礼状や無料の会報誌等を送付する、運営する施設等の作業の一環として作った「手芸品」等を寄附者にお返しする、活動報告会の案内をする程度であれば寄附金として認められると考えられます。
2021/03/30
Q組織を見直すために一旦活動を休止しているときに気をつけることは?
NPOには休眠という仕組みはありません。
法第28条、29条には、NPOは毎事業年度初めの3カ月以内に、事業報告書等や計算書類(活動計算書・貸借対照表・注記)、財産目録、役員名簿(全事業年度)、社員名簿(全事業年度末実における正会員のうち10名以上)を作成し、所轄庁に提出する必要があると規定されています。そのため、一年間活動していなかったとしても、総会を開催してそのことを審議し、その結果に基づき事業報告書等を所轄庁に提出する必要があります。
(特定非営利活動促進法第28条、29条 参照)
2021/03/30
Q理事や監事を選任するときに気をつけることは?
法第21条には、配偶者および三親等以内の親族が役員の総数の1/3を超えて含まれてはならないと規定されていますので、この範囲に注意して理事や監事選任しましょう。
中でも監事の選任には注意が必要です。法第18条に規定される通り、監事は理事の業務執行の状況や法人の財産の状況を監査する組織をチェックする役割を担うとともに、法第19条に規定される通り、不正の事実等を発見した場合には、所轄庁や社員総会に報告する義務があります。こうしたことから、牽制機能を発揮し、透明性を確保するためにも、監事は理事長及び理事とは親族関係にないことが好ましいといえます。
また、監事は法人の社員(会員)にはなれますが、職員として働くことはできないという点についても注意が必要です。
(特定非営利活動促進法第18条、19条、21条 参照)
2021/03/30
Q会員数が10名を下回らないために気をつけることは?
法第12条第1項4号に規定される通り、NPO法人には10名以上の社員数(会員数)が必要です。普段から会員のみなさんにこまめに活動状況をお知らせする等をして、10名を下回らないように気をつけましょう。
もし10名を下回った場合には、速やかに補充する必要があります。10名を下回ったままにしておくと、所轄庁から改善命令を受けることになり、それでも改善されなければ認証取り消しとなることがありますので気をつけましょう。
(特定非営利活動促進法第12条第1項4号、43条、44条 参照)
2021/03/30
Q所轄庁への事業報告書等の提出で気をつけることは?
法第28条、29条には、NPOは毎事業年度初めの3カ月以内に、事業報告書等や計算書類(活動計算書・貸借対照表・注記)、財産目録、役員名簿(全事業年度)、社員名簿(前事業年度末における正会員のうち10名以上)を作成し、所轄庁に提出する必要があると規定されています。会員に活動状況をきちんと報告するためにも、事業年度が終了したら速やかに総会を開催する準備を行いましょう。
もし総会未実施であれば、まずは所轄庁に連絡をし、速やかに総会を開催する準備をして、早急に書類を提出しましょう。そのままにしておくと、法第49条の規定により、罰則としてNPO法人の理事、監事は、20万円以下の過料に処されることがあります。
(特定非営利活動促進法第28条、29条、49条 参照)
法人運営のポイント
法人を運営する上で知っておくべきこと
2020/03/31
QNPOが事業を行っていく上で、課せられる税金は?その留意点は?
事業の実施や取引により発生する主な税金は下図の通りです。
中でも混同されやすい法人税については、法人税法第5条に規定される通り、基本的には国内のすべての法人の所得に対して法人税が課せられます。NPOであっても、同法施行令第5条の収益事業の範囲に定められる34業種の事業を行う場合は、その事業による所得に対して法人税が課せられます。また、収益事業を始める際には、収益事業開始届を税務署に提出する必要があります。
NPOの活動でよくある、スマホ活用講座やそろばん教室、英会話教室等は技芸教授業にあたり、活動の方法により収益事業に該当するかの取り扱いが変わることもありますので、事前に税務署に確認しましょう。
法人税 |
収益事業を行う場合に、その収益事業から生じた所得について課税されます。 |
消費税 |
基準機関又は特定期間の課税売上が1千万円超の場合に、課税売上高について課税されます。 |
法人事業税 |
収益事業を行う場合に、その収益事業から生じた所得についてのみ課税されます。 |
法人県民税 |
法人税割((収益事業を行う場合に法人税額に応じて課税)+均等割((原則として一律課税)
※収益事業を行わない場合、県税事務所に減免申請書を提出すれば減免されます。 |
法人市町村民税 |
法人税割((収益事業を行う場合に法人税額に応じて課税)+均等割((原則として一律課税)
※収益事業を行わない場合、市町村に減免申請書を提出すれば減免されます。 |
(法人税法第5条、7条、法人税法第5条施行令 参照)
2021/03/31
Q業務委託契約書、賃貸借契約書の作成で気をつけることは?
NPOは事業者ですので、不平等な契約から消費者を守る消費者契約法は適用されません。そのため、契約書は、いったん合意すると、事業を進めるために不都合な部分があっても簡単には変更できません。契約書は必ず目を通し、疑問点があれば質問し、不都合な点は交渉をして修正してもらうことが、将来のトラブル回避のために大切です。大事な契約の場合は、法律相談等で専門家に確認してもらうことも検討してください。
契約の種類はたくさんあり、チェックポイントも様々ですが、一般的には契約の目的から考えて、何ができて何ができないか(権利)、何をしなければならなくて(義務)、何をしてはいけないか(禁止事項)、想定されるトラブルや、契約を変更・終了するときのルールはどうなっているか等を確認します。
委託契約書と賃貸借契約書を締結する際に、一般的に確認しておくべきことは、以下のような点になります。
委託契約書 |
賃貸契約書 |
①目的・委託内容・仕様 ②委託料と支払時期 ③成果物の納入期限と方法 ④成果物の権利の帰属や費用負担のルール ⑤再委託の可否・その他禁止事項 ⑥契約内容変更のルール ⑦解約のルール ⑧損害賠償のルール・違約金の定め |
①契約期間・更新のルール ②賃料の額、支払方法、滞納時のルール ③敷金・礼金の取扱い ④付属設備と修繕のルール ⑤禁止事項 ⑥期間内解約のルール ⑦解除の要件 ⑧終了時の現状回復 ⑨特約事項 |
2021/03/31
Q補助事業や委託事業で経費を計上するときに気をつけることは?
補助要綱や仕様書で、対象または対象外となる科目が示されていますので、必ず事業実施前に確認しておく必要があります。不明な場合は担当課と事前に打ち合わせをし、精算時のトラブルを避けるようにしましょう。
なお、法人会計で使用している(「勘定科目」に相当するのが、行政では(「節」といいます。その主な経費項目は下表を参考にしてください。
執行費用 |
法人の勘定科目 |
行政の科目節 |
留意事項 |
講師謝礼 |
諸謝金 |
報償費 |
|
手話通訳料 |
諸謝金 |
役務費 |
|
会議時のお茶代 |
会議費 |
需用費(食糧費) |
|
タクシー代 駐車場使用料 |
旅費交通費 |
旅費又は使用料及び賃借料 |
自治体によって取扱いが異なる |
少額備品 |
消耗品費 |
需用費(その他需用費)又は備品購入費 |
自治体によって取扱いが異なる |
ボランティア保険 |
保険料 |
役務費 |
|
送金手数料 |
支払手数料 |
役務費 |
|
下水道使用料 |
水道光熱費 |
需用費(その他需用費) |
一部の自治体では使用料及び賃借料 |
その他留意すべき事項
〇人件費:正規職員の人件費が対象経費であるかどうかに留意してください。
(対象となる場合)
参入基準や限度額、割合が示されることがあります。また、計上する場合は該当者の事業への従事時間を明確にするために、出勤簿等を付けておくことがよいでしょう。
〇食糧費:例えば、ペットボトルのお茶は対象とするが、出前のコーヒーや弁当は対象外であるとか、対象経費の範囲に留意してください。一切認められない場合もあります。
2021/03/31
Q個人情報を取得するときに気をつけることは?
個人情報保護法の改正(平成29年5月30日)により、保有している個人情報が5,000件以下の事業者であっても、適用の対象になります。
個人情報とは、生存する個人に関する情報のことで、氏名、生年月日等で特定の個人を識別できる情報を言います。個人情報を扱う事業者は、個人情報保護法に定める通り個人情報を取り扱い、漏洩等が起こらないように管理する義務が発生します。そのため、アンケート等を行う際には、個人情報がそもそも必要かどうか吟味すべきです。
個人情報を取得する場合は、利用目的を通知またはHP等で公表し、目的の範囲内で利用する必要があります。アンケート等で個人情報を記載してもらう場合、今後、事業やイベントの案内等を送付したいのであれば、その旨も利用目的に記載しておかなければなりません。利用目的をあまりに限定しすぎると、使いたいときに使えないかもしれません。
また、本人の同意なく個人情報を公表するとプライバシー侵害になることも気をつけなければなりません。アンケート結果を発信する際には、個人情報が含まれていないか確認が必要です。
特に間違えやすい事項や疑問が生じやすい事項を取り上げています。
NPO法人である以上、守らなければならないことです。
今一度確認してみください。