連載コラム「西宮市市民交流センター × 日本政策金融公庫(JFC)」

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ソーシャルセクターを資金面でサポート「日本政策金融公庫(JFC)」

まず初めに・・・
NPO法人をはじめソーシャルセクターを応援する強い味方「日本政策金融公庫」は皆さんご存知ですよね。

2017年5月から翌年3月までの隔月で連載コラムを更新していきます。
コラムは、当センターのメールマガジンやホームページで読むことができます。
毎回テーマは異なり、「NPOに関する知識」や「NPOに役立つ情報」に関する情報を発信していきます。

日本政策金融公庫は、ソーシャルビジネス支援基金をはじめ、多くのNPOを資金面でサポートしている政府系金融機関です。

本コラムへのご質問やご相談は市民交流センターへご連絡ください。

第3回(最新)「熱い想いと冷静な事業計画が事業を飛躍させる~ソーシャルビジネス(SB)の創業事例~」

「この2年間、苦労の連続でした」と語るのは、福岡県中部でデイサービス(通所介護)を営むA氏。

この地域は、かつては筑豊炭田とも呼ばれ、石炭の採掘が盛んに行われていました。

近年、65歳以上の高齢化率が上昇の一途を辿っており、
今後、介護負担の増加や労働力不足等の社会問題が深刻化する懸念が出ています。

A氏は「地域の高齢者にもっと豊かな生活を提供したい」との強い想いで、今から2年前、勤務時代に貯めた自己資金と借入でデイサービスを創業しました。

デイサービスとは、利用者が日帰りで施設に通い、入浴や食事などの介護や機能訓練等を受けるサービスです。施設を利用する人は、他の利用者と接することで引きこもりや孤立を防ぐことができます。

また、介護をする家族にとっても負担の軽減につながります。
加えて、デイサービスは、地域医療と介護をつなぐ地域連携拠点としての重要な役割も担っています。

平成24年度からは経管栄養(口からの摂取が難しい利用者に対して、体外から消化管内に通したチューブで流動食を投与する処置)等の医療的ケアニーズも増える等、サービスを提供する事業者に求められる役割も高まっています。

一方、経営は決して楽ではありません。

日本政策金融公庫総合研究所が平成28年度に発表した調査では、デイサービスを営む約1,900の事業者のうち、「経営が赤字である」との回答は約4割でした。

特に従業員規模が9人以下の比較的小規模な事業者においては、5割を超える事業者が赤字となっています。

「地域の高齢者にもっと豊かな生活を提供したいとの想いが先行し、経営者としての冷静な視点が足りませんでした」と語るA氏。

空き家となっていた古民家を買い取って、大規模な改修を行うとともに、送迎車2台、スタッフ5人を揃えるなど、万全の態勢で臨んだ創業でした。

しかし、現実は、事業所の知名度もなく、利用者は毎日2~3人にとどまり、準備した運転資金がみるみる減っていくなど想定外の連続でした。

なんとか反転させようとスタッフをリストラするなど必死に経費削減に努めましたが、かえってスタッフとの信頼関係を損ない、離職者が後を絶ちませんでした。

打つ手がことごとく裏目に出て、肝心のサービスの質を低下させる悪循環に陥りました。A氏は振り返ります。

「熱い想いが先行し、冷静な目で事業(収支)計画を作らなかったことが失敗の原因でした」。

その後、A氏は、事業計画をもう一度練り直します。

まず着手したことは、スタッフ教育の充実です。スタッフとの信頼回復に努め、ひとりひとりの利用者に丁寧な接客を心掛けました。

手ごたえを感じたのは創業して1年が過ぎた頃です。口コミで事業所の評判を聞いた利用者が1人、2人と増え始めたのです。

「利用している●●さんからスタッフの応対が良いと聞いた」

「地域のケアマネージャーから、とても良い事業所があると薦められた」など、良い評判が少しずつ広まるようになったのです。

口コミがさらなる利用者を呼び、徐々に利用者が増えていきました。こうして、創業して2年が経つ頃には経営も軌道に乗りました。
今回の事例は、ソーシャルビジネスを行ううえで重要なことを示唆しています。熱い想いと、冷静に事業を見つめることのどちらか一方だけでは上手くいきません。「熱い想い」と「冷静(客観的)な目」の両立が事業の飛躍には欠かせないということです。

第2回(2017年7月更新)「移動スーパーが安心を運ぶ~ソーシャルビジネス(SB)の創業事例~」

「家にいても熱中症になるんですよ。しっかり水分摂ってくださいね!」「こんな暑いときは畑に出ないほうがよいですよ!」・・・

京都府北部の丹後地域で移動スーパーを開業した女性がお年寄りと交わす会話です。日本三景の一つ、天橋立周辺の宮津市や舟屋で有名な伊根町を、3コースに分けて週2回ずつ、大音量の音楽を流しながら冷蔵設備のついた専用の軽自動車で巡回しています。

それまで事務職のパートをしていた女性が、2人の子どもに手がかからなくなったこともあり、一念発起して移動スーパーを始めたのは2年あまり前。京都府北部を拠点とするスーパーの販売パートナーとして契約、移動スーパーのハンドルを握ります。雨の日も雪の日も、契約するスーパーで惣菜やお弁当、野菜、果物、お菓子、日用品などを積み込むが朝の日課です。

今では地域のお年寄りにとって欠かせないインフラとなっています。

近年「買い物難民」という言葉を耳にします。地域で暮らすお年寄りには自動車の運転をしない(できない)人が少なくありません。「平成29年版高齢社会白書」(内閣府)によると、高齢者の日常の買い物の方法を尋ねたところ、4人に3人が「自分でお店に買いに行く」と回答、主な手段は「自分で自動車を運転」と回答しています。

しかし年齢別にみると、75歳以上の女性では、その割合が大幅に低下しています。そこに「買い物難民」という社会問題が存在します。

そうした社会問題を、ビジネスの手法を用いて解決に取り組むことを目的とした事業活動がソーシャルビジネス(SB)であり、持続的な取り組みでなければなりません。移動スーパーの良いところは、実際に商品を手に取って購入できる点です。

そこには、売り手と買い手の間にコミュニケーションがあります。通信販売やインターネットにはない強みといえるでしょう。
「○○ある?」「次は○○持ってきてくれる?」というお客様の細かなニーズにも対応できます。

販売パートナーは個人事業主です。スーパーから商品を預かり、売れ残りはスーパーに返品する「委託販売」の形態をとっており、たくさんの商品を積み込むことができるわけです。収入は売上の17%。それに1商品につき10円だけお客さまに負担してもらい、スーパーと販売パートナーに分配されます。この収入から、車両にかかるガソリン代などの経費をまかない、残りが利益となります。

また、今回の事例では、見守り活動も業務の一環となっており、気になったことがあれば、地域の包括支援センターのケアマネージャーさんに連絡したり、連絡先を聞いている家族に伝えたりすることもあるそうです。

週2回の巡回でお客様に会うと、顔色や健康状態などの変化まで分かるそうです。冒頭の女性の言葉は、地域のお年寄りにとって、また家族にとって、何よりも安心につながっているのです。

第1回(2017年5月更新)「ソーシャルビジネスって何?」

私たちが暮らす社会には、高齢者や障害者の介護・福祉、子育て支援、まちづくり、環境保護、地域活性化など、多様な社会課題が存在しています。こうした課題の解決を使命(ミッション)として、ビジネスの手法を用いて解決するのがソーシャルビジネス(SB)です。

つまり、社会性と事業性を満たす必要があります。

SBの代表的な担い手としてNPO法人があげられますが、株式会社等の営利企業や個人でもSBに取り組むところは少なくありません。

日本政策金融公庫総合研究所が2014年に行った調査では、NPO法人の75.1%、株式会社等の6.1%がSBに取り組んでいます。
社会貢献活動を目的とするNPO法人はともかく、営利企業や個人がSBに取り組むのはなぜでしょうか。

それは、ビジネスとして成立するだけのニーズがあるからです。

たとえば、「買い物難民」という言葉があります。最近では、過疎地域だけでなく市街地においても住民の高齢化等に伴い、
日常の買い物が困難になっている方がいます。ある食品スーパーでは、「買い物難民」の解消を目的に移動スーパーを運行し、
高齢者に喜ばれています。

また、アフリカやアジアの開発途上国の製品を公正な価格で輸入し、先進国市場で販売するフェアトレード(Fair Trade)という手法があります。フェアトレードの製品を扱うことにより、過酷な生活環境にいる生産者の生活水準の向上、貧困問題の解決を目指している事業者もいます。

このように、SBとは、今まさに解決が求められている社会課題に取り組むことを目的とした事業活動です。一部の企業やNPO法人だけが担う特別なものではありません。

SBの本質が、社会の変革を望む担い手の志であるのであれば、すべての方に踏み出すチャンスがあるはずです。

本コラムでは、SBの担い手の方、SBへの取り組みを考えている方にとって、一歩踏み出すためのヒントとなるような情報を連載していきます。